大佛次郎記念館で出会った「敗戦日記」|文学と歴史と猫を辿る

赤レンガの大佛次郎記念館の入口

2026年9月23日、横浜の港の見える丘公園の中にある「大佛次郎記念館」へ。

文学と歴史と猫。
この三つが、一人の作家の中でどのようにつながっていたのだろう。展示を見ているうちに、そんなことを考えた午後でした。

大佛次郎という作家を、少し身近に

人気シリーズ『鞍馬天狗』をはじめ、時代小説『赤穂浪士』、ノンフィクション『ドレフュス事件』、そして幕末から明治を描いた『天皇の世紀』など、幅広い作品を残した作家・大佛次郎。

大佛次郎(おさらぎ・じろう)とは
1897年、横浜生まれ。本名は野尻清彦。教員や外務省嘱託として働いたのち、1924年に発表を始めた『鞍馬天狗』シリーズが人気となり、専業作家の道へ進みました。時代小説だけでなく、現代小説、ノンフィクション、童話、戯曲にも取り組んだ人です。1973年没。
人物紹介の参照:大佛次郎記念館「大佛次郎について」

「敗戦日記」に残された、その時代を生きた人の記録

館内で特に印象に残ったのが、終戦前後の日記でした。

展示されていたのは、「敗戦日記」の1945年8月14~15日の記録。展示の説明には、8月15日の数日前にポツダム宣言のことを知ったことなど、詳細な記録が書き込まれています。

大佛次郎の「敗戦日記」と1945年8月14~15日の展示説明
館内で展示されていた「敗戦日記」。1945年8月14~15日の記録。

その時代を生きた人だからこそ残せた記録。

歴史の出来事を、後から振り返る言葉だけではなく、その日を生きていた人の記録から辿る。日記というものの重みを感じます。

史実の重みと、物語を紡ぐこと

そして、もう一つ心に残った言葉。

史実の重みで自分の空想力をふさがれて出口をなくしてしまう

大佛次郎。松本清張との対談「文学五十年、この孤独な歩み」(『文藝春秋』1968年5月)より、館内展示の一部を引用。
史実と空想について語った大佛次郎の言葉を紹介する展示
松本清張との対談「文学五十年、この孤独な歩み」(『文藝春秋』1968年5月)からの言葉を紹介する展示。

『天皇の世紀』を書いているときのこととして語られた言葉でした。

史実を知れば知るほど、自由に物語を紡ぐことが難しくなる。歴史を題材に多くの作品を書いた作家ならではの葛藤だったのかもしれない。

文学と歴史と、猫

そんな大佛次郎は、大の猫好きとしても知られている方。

「猫へのまなざし、こどものおはなし」展の案内看板
訪問時に掲示されていた「猫へのまなざし、こどものおはなし」展の案内。

記念館を歩いていると、猫は単に「好きなもの」というだけではなく、史実の重みから少し離れ、想像の世界へ戻るための大切な存在だったのでは……と思えてくる。

これは、展示を見ながら私が感じたこと。

大佛次郎記念館の和室から見える緑
窓の向こうには、木々の緑が広がっていました。

緑に囲まれた洋館、静かな書斎、窓の向こうの木々。

そして、ちゃんと猫もいました。

緑を背景に縁側でくつろぐ姿の猫
そして、ちゃんと猫もいました。

併設の「ティールーム霧笛」で

こちらは、記念館に併設されているカフェ「ティールーム霧笛」での写真。

ティールーム霧笛の花柄のコーヒーカップと窓辺
記念館に併設されたカフェ「ティールーム霧笛」での一枚。

花柄のコーヒーカップと、窓の向こうの緑。

文学と歴史と猫。
大佛次郎という作家の世界を、少し身近に感じられた午後でした。

大佛次郎記念館へのアクセス・観覧案内

住所〒231-0862 横浜市中区山手町113(港の見える丘公園内)
電話045-622-5002
開館時間4~9月:10:00~17:30(入館17:00まで)
10~3月:10:00~17:00(入館16:30まで)
休館日月曜日(月曜が祝休日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間、特別資料整理期間等
観覧料一般(高校生以上)200円、中学生以下無料。団体・各種割引等は公式案内をご確認ください。
電車みなとみらい線「元町・中華街駅」から徒歩8分。6番出口からアメリカ山公園を経由するルート、または5番出口から谷戸坂を経由。
JR根岸線「石川町駅」元町口改札から徒歩20分。
バス「港の見える丘公園前」下車、徒歩約2分。
駐車場専用駐車場はありません。近隣の駐車場をご利用ください。
公式案内観覧案内 / アクセス / ティールーム霧笛

訪問日:2026年9月23日。観覧・アクセス情報は2026年9月26日に公式サイトで確認しました。展示内容や開館状況は変更される場合がありますので、お出かけ前に公式案内をご確認ください。